今日はまた少しマニアックなのだけど、
レディオヘッド(radiohead)のミニ・アルバム『
ノー・サプライゼス〜ランニング・フロム・ディーモンズ(No Surprises/Running from Demons)』のご紹介。レディオヘッドの来日公演を記念した日本特別編集盤!!サード・アルバム『
OK コンピューター』からのシングル「
No Surprises」に加えて、シングルB面曲など全6曲を収録!

←←
この作品にはロック・ナンバーっぽいものはあまり入っていない。宗教的な印象のある神秘的な曲が多い。「
ノー・サプライゼス」は『OK コンピューター』の中で最もやさしくて美しい曲。しかし、歌詞をよく読むと、この曲は自殺をほのめかす曲のようにも思える。一酸化炭素、最後の発作、そして「何の心配も驚きもなく、静かに」消えていくというイメージ。騒々しく、苦しみの多い社会生活から身を引きたいという意味での、象徴的な自殺の歌(何かを悟って生まれ変わること?)なのかもしれない。新リミックスの「
パーリー」ではトム・ヨークのボーカルが最大で3声あやしく絡み合い、ギターもあやしくゆれる、おもしろい曲だ。「
メラトニン」はやや未完成な感じの曲だが、天から光が降り注いでくるような雰囲気がいい。「
ミーティング・イン・ジ・アイル」は、ジョニーのメロトロンをフィーチャーしたアンビエントなインストゥルメンタル・ナンバー。『キッドA』以降のレディオヘッドを先取りしたような感じだ。「
ビショップス・ローブス」は、トムヨークが権威主義的な高校とその校長への恨みを綴った歌。重く、陰鬱なサウンドが皮肉っぽい。
そしてラストの「
ア・リマインダー(思い出すための歌)」は、僕の一番のお気に入り。
トム・ヨークの態度表明とも言える、純朴で内省的で美しい曲だ。
「歳をとって僕が変わってしまったら、昔の僕を思い出させておくれ。かつて僕は自由だったと。もし僕が腰を落ち着けて腕を組んでいたら、この曲にあわせて抱きしめておくれ。もし僕が金の亡者になってくだらないことを言っていたら、僕のことをやっつけてくれてもいい。・・・何があろうと、そのとき僕らがまだ語り合うことができたなら、受話器をとってこの曲を聞かせてほしい」
トム・ヨークの細くて透き通った声、バンド演奏のゆるやかな起伏、余韻の残るエンディングと、ともかく素晴らしい感動的な作品だ。
ジャケットには「
金魚鉢の中の孤独への解毒薬」という詩も書かれている(「解毒薬」の日本語訳が「アンチテーゼ」となっているのは間違いだ)。孤独から抜け出るための、人とまともに付き合うための教えが羅列される。書かれていることはもっともらしいのだけど、それがかえってトム・ヨークの憂鬱感を漂わせているところが『OK コンピューター』の「フィッター、ハッピアー」に似ている。

←OK コンピューター