先月発売された
トム・ヨークのソロ・デビュー作『ジ・イレイザー』をようやく聴いた。レディオヘッドの音楽と大きく違うものではないけれど、トム・ヨークはここでもまた新しい世界を見せてくれる。そして美しい。一言で言うなら、これは「
絶望の淵で癒してくれる音楽」である。

このアルバムのリリースはリスナーにとっては突然のことだったわけだが、ここに入っている曲は、かなり以前から書き溜められていたのだという。たしかに、
レディオヘッド『キッドA』『アムニージアック』から
『ヘイル・トゥ・ザ・シーフ』あたりの雰囲気のする曲もある。本作の特徴としては、ビートへのこだわりが強いことと、メロディ・ボーカルの美しさが増していることだろうか。
「
ジ・イレイザー」は、サビのメロディが壮大で美しい。やさしく、気持ちよく、癒しの力を持つボーカルが印象的だ。「
アナライズ」は、エキゾチックなメロディながら、キリスト教的(?)な終末観をも感じさせる曲。「
ザ・クロック」はヴォイス・パーカッション的味付けのあるダンサブルなナンバー。アップビートにより、焦燥感・不安感をかきたてられる。ゆったりとした「
アトムズ・フォー・ピース(atoms for peace)」は、救いと希望のある前向きな曲だ。美しいメロディをトム・ヨークが気持ちよく歌う。ゆったりしているようで、バスドラム音が踊っているのもおもしろい。低音ギターとベース音によるリフがかっこいい「
And it rained all night」は、エレクトロニック・ロックといった感じのおもしろい曲。歪んだ電子音が荒れまわる間奏にも興奮する。「I can never reach you...」という絶望感あふれる叫びが、美しくも悲しい。「
ハロウダウン・ヒル」は、かなりポップなリフを持ちながらも、重厚なオルガンが重なったとたんに終末的な空気がたちこめ、大災害の後のような重い雰囲気になる。力強く訴えかけてくるトム・ヨークのボーカルが強烈だ。途中、ホラー映画にでも出てきそうな絶望的な音色のピアノにぞくっとくる。その後のギターの入り方もかっこいい。「
シンバル・ラッシュ」は、ものすごい曲だ。終末臭あふれるオルガンが再び登場し、大災害後の世界のイメージが広がる。これは、911後の世界のイメージなのだろうか。あるいは、地球温暖化による「世界大洪水」に呑み込まれゆく世界を暗示しているのだろうか。(ちなみに、本作のジャケットの絵はそんな感じ。)そして、深い深い悲しみをたたえたピアノ。
荒廃した大地をなぐさめる雨のようなサウンドで、この作品は感動的に幕を閉じる。
YouTube「シンバル・ラッシュ」ライブ←オリジナルと少し違うが、かっこいい!!
YouTube「And it rained all night」←プロモーション・ビデオ
YouTube「ハロウダウン・ヒル」←プロモーション・ビデオ

