自分の好きなアーティストの衰えを感じさせる音源ほど、聴いていてつらいものはない。正直言って、今回の作品はそういう心配を少し抱きながら聞いた。しかし・・・そのような心配はまったく不要だった。YouTubeで見られる最近のコンサート映像では「かなり動きは減ったなぁ」というビジュアル面の印象も強かったが、レコードで聴く音は素晴らしいの一言。

『12 Gardens Live』発売前に書いた記事でも触れたが、この新作ライブ盤は、少しマニアックな選曲がおもしろい。ビリー・ジョエルのライブ音源をすでに持っている長年のファンにとっても楽しめる内容だ。中でも僕が大感動したのが「ナイト・イズ・スティル・ヤング」。クリスタル・タリフェロとのデュエットだが、これが滅茶苦茶に渋いのだ!サビでビリーの歌声がぐわーんと伸びて空間が広がるあたりは、もう感動で涙がこみあげてくるほど・・。最初から最後まで、鳥肌がたちっぱなしだった。それから「ザンジバル」も素晴らしくかっこいい!トランペット、ベース、ドラムの白熱のソロ・セッションにも興奮する。「エンタテイナー」はギター中心のシンプルな演奏がだんだんと盛り上がっていくのがとても気持ちいい。「グレート・ウォール・オブ・チャイナ」「シーズ・ライト・オン・タイム」「ローラ」「キーピン・ザ・フェイス」も楽しい。
すでにライブで聴きなれている定番曲も、どれも素晴らしかった。ビリー自身、かなり意識して演奏を一味違ったものにしようとしたようである。ニューヨークでのコンサートということもあるが「ニューヨークの想い」は最高に気合が入った名演だ。サックスは、最盛期のビリージョエル・バンドで活躍したリッチー・カナータ。「マイ・ライフ」「マイアミ2017」といった曲にも、マンネリ感などはまったく無く、ただただ気持ちいい。「シーズ・オールウェイズ・ア・ウーマン」では聴衆が一緒に合唱していて、会場の興奮が伝わってくる。2枚目後半、コンサートのクライマックスの盛り上がり方もすごい。「ハートにファイア」「ビッグ・ショット」「ガラスのニューヨーク」「若死にするのは善人だけ」「イタリアンレストランにて」あたりは本当に驚くほどパワフルだ。「ビッグ・ショット」なんか、もうどこからこんなパワーが出てくるのかと思うくらい、イカレテイル。最後、「ピアノマン」では感動的な大合唱になる。そして、さらにアンコールという形で「そして今は・・・」が続く。ビリー・ジョエルのキャリア後半の曲の中で最も美しい曲の、最も美しい演奏で幕がおろされる。
それから、シークレット・トラックがまた素晴らしい!ネット上では、「二人だけのルーム」と「ロックンロールが最高さ」が日本盤のみのボーナス・トラックとして収録されるという情報が流れていたが、実際には日本盤にもジャケットに表記は無く、シークレット・トラックという扱いだ(アメリカ盤にも収録されているようだ)。「二人だけのルーム」はアルバム『ナイロン・カーテン』の中ではやや目立たない曲という認識だったが、今回のライブ音源で印象が変わった。最高に熱の入ったのりのりの演奏で嬉しくなる。「ロックンロールが最高さ」はライブで定番の曲だが、このCDの音源はベスト・パフォーマンスだ。ビリーの歌声も演奏もとても気持ちよく弾んでいる。
『ビリー・ザ・ライヴ〜ミレニアム・コンサート』の発売時にも、90年代のビリーのライブの中では最高だなぁと驚いたのだが、『12ガーデンズ・ライブ』の盛り上がりはそれを越えている。最近のビリー・ジョエルのこの勢いが、新作製作にも向かうことを期待したくなる・・(「もうポップスは作らない」という宣言を撤回して・・)。
ラベル:ビリー・ジョエル
これもちろん買いました・・・がまだ聴いてません・・・
これ、全部で32曲、なかなかの大作ですからね。僕も一気にとおして聞く時間は取れません・・。でも、すごく気合が入っていて、楽しいですよ。
ライブ・アルバムだけに各方面で評判がよい
みたいですね。
評判、いいですか?まだ、あまり他の人の評価を目にしてなかったのですが。
そうですね、選曲もベスト、パフォーマンスも最高レベルだと思います。
トラックバックとコメントありがとうございました。
今、museさんの記事を読ませていただきながら、あらためてCD聴いているところです。
何度聴いても胸が熱くなりますね〜。
広い会場での大盛り上がりのライブもいいですけど、できることならこじんまりしたライブハウスで目の前で「ベイビー・グランド」を弾いてもらいたいです☆
トラックバックありがとうございました。
あー、その「こじんまりとしたライブハウスで・・・」というのはわかります!!近くでじっくり聞くっていうのは・・・でも、もうほとんど無理なのかもしれませんね・・。ドーム規模のコンサートでもチケット争奪戦になるんですから・・。
ビリー・ジョエル、好調ですねー。この流れのまま日本に来てくれるというのは、本当に嬉しいことです!
やっとこさ、ビリーのライブ盤を聴くことができました。
遅くなってけど、レビューしましたんで、
TB よろしくです、
私も、アリーナやドーム・クラスより、
ライブハウスで聴きたいですな。
“She's Got A Way”や“This Night”あたり・・。
ライブハウスでビリー・ジョエル・・もはや夢のような話ですね・・。一時、大きな会場でのツアーはやめて、小さいところで演奏活動をしたいとビリーがいっていた時期があったと思いますが、さすがにワールド・ツアーでそんなことはできないでしょうしね。アメリカ本国では、まだチャンスを作ってくれるかもしれませんが。
やっぱりCD欲しくなっちゃいました、ライブのチケットもまだとっていないので、今から探してみます。
チケット、まだ取れるはずなのでがんばってください!日本公演の曲目はまた違うものになるかもしれませんが、このライブ・アルバムはこれで楽しめると思いますよ。「これをやってほしい〜」というのが出てきてしまうと思います・・・。