2006年05月28日

ザ・フレーミング・リップス@日本人女性の魅力

ニール・ヤングの新作が全曲フル試聴できるということを書いた。全曲フル試聴というと、ザ・フレーミング・リップスの『ヨシミ・バトルズ・ザ・ピンク・ロボッツ』もそうだったことを思い出す。彼らのホームページで全曲聴くことができたが(今はもうできない)、その素晴らしさに感動してCDも購入した。

ネット上での全曲フル試聴というのは、ある意味、挑戦的な方法だと思う(ソニック・ユースの新作もそうらしいし、わりとよくあるようだが)。ニール・ヤングの新作の場合、社会的なテーマに真っ向から挑んでいることもあり、セールスはあまり期待できず、それで、売ることよりもまずは聴いてもらうことを優先させたのかもしれない(ラジオ放送が禁止された場合のことを見越して、公開したという見方も)。ザ・フレイミング・リップスの場合は、彼らの本作への自信のあらわれだったのではないかと思う。実際にこの作品で彼らは初のグラミー賞も受賞している。
フレーミング・リップス/ヨシミ・バトルズ・ザ・ピンク・ロボッツ←←日本盤
Yoshimi Battles the Pink Robots←試聴はこちらから

ジャケット表には「ザ・フレーミング・リップスは、あなたが人生と、このレコードをエンジョイしてくれることを願っています。」と小さく書かれている。背表紙の裏には「幸せだと泣きたくなる。」と書かれている。中にも「君の知っている人は皆、いつか死ぬ。」「君は一番美しい顔をしている。」といった言葉が歌詞から抜き書きされている。この作品は、ザ・フレーミング・リップスのメンバーの友人である、日本人女性の突然の死を悼む気持ちから生まれたという。人生の素晴らしさと愛がこの作品のテーマだ。

こういった言葉がジャケットに書かれていても、中身がともなわなければひいてしまうだろう。しかし、本作にはその心配はない。全編をとおして愛に満ちあふれていて、とても勇気づけられる。ウェイン・コインの繊細で、微妙にふらついたボーカルの持つ切なさに心をかきゆらされる。また、随所に遊び心やユーモアが感じられるサウンドが楽しい。シュールでポップ。アコースティックなサウンドをベースに、エレクトロニックなアレンジを加えることによってできた、完成度の高い幻想的なサウンドだ。

このアルバムの前半は、空手の黒帯の「ヨシミ」と闘うことになったピンクのロボットが、彼女に恋をしてしまうという物語だ。このロボットは闘った相手を必ず殺すようにプログラムされているが、「ヨシミ」に恋をしてしまったロボットはある決心をする・・・。「ワン・モア・ロボット/シンパシー 3000−21」では、ロボットが愛にめざめて機械以上の存在になる。幻想的なサウンド空間と、上昇するベース・ラインによる高揚感が気持ちいい。「ヨシミ・バトルズ・ザ・ピンク・ロボッツ」では、ロボットに比べて圧倒的に小さいヨシミがロボットに奇跡的に勝ってしまう。じつは、恋愛感情のためにヨシミを殺せなくなったロボットが自殺をしたのではないか・・・という物語になっている。ちなみに、ヨシミという名前はボアダムスの yoshimi P-we からとられたという。彼女は録音にも参加している。曲中にしばしば、録音中の yoshimi P-we の話し言葉(「あー無理やなー」etc.)が挿入されている。

イン・ザ・モーニング・オブ・ザ・マジシャンズ」は、愛っていったい何なんだと考え込む歌だ。イントロ・間奏の近未来音楽のような部分がおもしろい。「エゴ・トリッピング・アット・ザ・ゲーツ・オブ・ヘル」は、キャッチーなベース、甘美なメロディ、美しいストリング・サウンドにすっぽり浸りきれる。「アー・ユー・ア・ヒプナティスト??(君は催眠術師??)」では、風変わりなマシーン・ビートの上にトリップ感のあるサウンド世界が広がる。「イッツ・サマー・タイム」は、亡き友人の姉妹たちへのメッセージ。心の内は深い悲しみで満たされているけれど、外を見れば希望に満ちた夏が広がっていることに気づくはずだよ、という励ましの歌だ。そして、感動的な「ドゥ・ユー・リアライズ??」へと続く。(悲しみを抱えながらも力強く立っている)君は最も美しい顔をしている、という言葉が心に残る。そして、未来への力強い希望を感じさせる「アプローチング・パヴォニ・モン・バイ・バルーン」でアルバムは幕を閉じる。
フレーミング・リップス、ポスター←ポスター
ザ・フレーミング・リップスは、日本人女性に特別の思い入れを持っているようである。彼らは、知り合いとなった日本人女性たちを「気品と威厳に満ちていて自分を安売りするようなことはなく、従順なようでいて、でも芯の部分で強さを持ったひとたち」と称えているそうだ。

ところで、最近発売されたザ・フレーミング・リップスの新作は、ニール・ヤングと同様、「反戦・反ブッシュ」の作品になっているそうだ。こちらも要チェックだ。フレーミング・リップスは「SUMMER SONIC 06」への参加も決まっている。
【CD】ザ・フレーミング・リップス/アット・ウォー・ウィズ・ザ・ミスティックス<2006/4/12>←新作  フィアレス・フリークス:ザ・フレーミング・リップス ストーリー←こちらは映像集


ラベル:反戦 日本
posted by muse at 18:04| Comment(4) | TrackBack(1) | The Flaming Lips | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
museさん、こんにちは!
ザ・フレーミング・リップスの『ヨシミ・バトルズ・ザ・ピンク・ロボッツ』、買おうと思います。
museさんの解説を読むと、このアルバムがどんなに素晴らしいかということがひしひしと伝わってきます・・・。

殺す側の立場のものが、殺される側の立場のものに恋をしてしまうという“フェアリーテイル”は、私も考えたことがあるんです。夢をヒントにした詩なのですけど・・・。

>「気品と威厳に満ちていて自分を安売りするようなことはなく、従順なようでいて、でも芯の部分で強さを持ったひとたち」

フレイミング・リップスによる、この日本女性への評価は、日本女性である私にとって、とても元気づけられる言葉ですね・・・!
「頑張ろう!」と思えます!
そしてフェアリーテイルを信じたい!←シツコイですね(笑)

でも、museさんって、やっぱり天才ですよねっ♪♪
Posted by ルル at 2006年05月29日 12:40
ルルさん、どうもありがとうございます!!
そういえば、一枚の作品をみっちりご紹介するのは久しぶりでしたね。天才・・・だったらいいなと思いますが・・・。僕はこの記事を書くために、池の周りを4往復と、50mプールをクロールで3周半するくらいの努力をしました(冗談です)。

あ、それから本文では書きそびれましたが、日本盤には「ヨシミ・バトルズ・ザ・ピンク・ロボッツ」の日本語バージョンがボーナストラックで入っていて、これもいい感じですよ。外国人が日本語で歌うバージョンってときどきありますが、フレーミング・リップスのは、なんだかすごく頼りなくっておもしろいです。
Posted by muse at 2006年05月29日 13:43
TBありがとうございます。
「デュード」でググると一位という以外取り柄のないブログですが(おむつにかなり追い上げられています……)、僕も日本人女性は大好きです。
Posted by DUDE at 2006年05月29日 21:30
DUDEさん、どうもありがとうございます。
僕もよく日本人女性を好きになりますが、周りにいるのが日本人女性ばかりだからかもしれません。
しかし、おむつバッグもなかなかいいもんですね・・・。
Posted by muse at 2006年05月30日 10:12
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みそひともじに恋して
Excerpt: 初めまして けんけん と申します。 古典はお好きでしょうか? 現代的な解釈で身近な和歌・俳句(特に恋の歌)を紹介しています。
Weblog: みそひともじに恋して@恋するみそひともじ
Tracked: 2006-05-30 07:51
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