
The Nylon Curtain
『ナイロン・カーテン』ビデオ視聴!←こちらにビデオがあります。
この作品は実は、ビリー・ジョエルのファンの間でも意外と評判がよくないのである。人気が低い理由はおそらく、この作品には「聞いて楽しいポップ・ソング」が少ないということだろう。しかし僕は、この作品がかなり好きだ。ひねりの入った刺激的な楽曲がこの作品の魅力だと思っている。ビリー・ジョエルはこの『ナイロン・カーテン』の次に、聞いて楽しい極上ポップ・アルバム『イノセント・マン』を作っている。僕も昔は『イノセント・マン』が大好きで聞きまくっていたのだが、あまりのストレートさに少し飽きてしまったのか、最近はあまり聴かなくなった。一方、『ナイロン・カーテン』の方は何度聞いても飽きない深みを持っていて、今でもよく聴きたくなる。
不況に苦しむ鉄鋼工場の街を描いた「アレンタウン」は、内容にもかかわらずおもしろい曲だ。工場の音を模倣したような妙な掛け声が楽しい。ビリー・ジョエルの曲には英語の発音がおもしろいものも多いが、こういう音遊びのセンスは抜群だと思う。サイケデリック時代のビートルズに似た雰囲気を持つ「ローラ」は、ビリーのポップ・センスとちょっぴり病的なメロディがいい感じにブレンドされている。「プレッシャー」はビリー・ジョエルの楽曲の中ではかなり浮いている曲だ。ビデオ・クリップも変だった。意味不明の現象が次々に起こる中でもがき苦しむという不思議なビデオだ。「シーズ・ライト・オン・タイム」は、なかなかに複雑なコード進行を持つひねりの効いたポップ・ソング。寒い冬に暖かい灯をともしてくれるといった感じの曲で、クリスマスになると僕は毎年この曲を聴いてしまう。「ふたりだけのルーム」には、少しビートルズの「アイ・アム・ザ・ウォーラス」を意識しているような部分がある。
そして、このアルバムの色をもっとも強くあらわしているのが「サプライズ」だ。レディオヘッドの「ノー・サプライゼス」とも少し印象が重なるのだが、何か取り返しのつかないことを「大丈夫、たいしたことはないんだ」と繰り返し思い込もうとしているような、どことなく恐ろしい不思議な雰囲気を持つ曲だ。その次の「スカンジナヴィアン・スカイ」も不思議な曲だ。空港のサウンド・エフェクトが「海外の空港での孤独感と緊張感」を想起させる。そして、不穏なピアノの連打、らせん状に下降していくストリングス、頭の中をかき乱すようなサビのドラム。これは危険な曲だ。一方で商業的なポップ・ソングを作りながら、このような危険な曲を作ってしまうところに、ビリー・ジョエルの奥の深さを感じる。最後の「オーケストラは何処へ?」も、ビリー・ジョエルには珍しく、どうしようもない孤独感を感じさせる一曲だ。
ちょうどこの作品の後にビリー・ジョエルは離婚をするのだが、おそらくこの頃のビリーは心の中に不安定なものを持っていて、それを表現せずにはいられなかったのだろう。ビリーが自分の精神的な弱さも含めて自己表現をしたデビュー作『コールド・スプリング・ハーバー』と合わせて、ビリー・ジョエルを知りたい人にはとくにお薦めしたい一枚だ。
ラベル:ビリー・ジョエル
こちらは、アルバム自体が変わっているんですか?
彼のは次に
「ニューヨーク物語」
を買おうかなと思っていたんですが、こちらも興味あります♪
そうですね、一枚一枚のアルバムの中でもかなり幅がありますよね。それでも、「ニューヨーク物語」「ストレンジャー」「ニューヨーク52番街」「グラスハウス」あたりは方向性がわりあい共通していたと思うんですが、「ナイロンカーテン」はかなり違ったことをやってますね。
私はこのアルバムもちろん好きです。
が、museさんと逆で、AN INNOCENT MANの方が、いまだによく聴きます。
どちらもリアルタイムで聴きましたが、実は、ナイロンは最初から気に入ってて、
逆にイノセントは、どうも最初はしっくりこなかったので、
年を経るごとに、自分の中での位置が逆転した、ということです。
ちなみに私がいちばん好きな彼のアルバムはSTORM FRONTですね(前にも書いた?)
まあどのみち、今もビリーはよく聴いてます。
ところで、昨年買った2枚組ベストEssentialに
Pressureが入ってないのが、私はどうしても許せません。
Pressureのイントロは「東京音頭」みたいだと、当時みんなで言ってました(笑)。
ほぉー、僕とは逆の逆転ですか。でも、「最初はわからなかったけどだんだん好きになった」場合には、「好き」が長続きするというのは、よくありますよね。
『ストーム・フロント』も名盤ですよね。「That's not her style」も最高にかっこいいし、「ダウンイースター"アレクサ"」とか「And so it goes」とかも素晴らしい。ビリー・ジョエルのファンの中にも、後半はあまり好きではないという人もいるんですが、僕はこの作品も、次の『River of Dreams』も大好きです。(『ブリッジ』はやや評価が落ちますが)
ビリー・ジョエルは好きなので、もう1回(笑)。
SFのことはそのうち自分のBLOGで記事にするつもりなので、
ここではあまり書きません。
BRIDGEですが、確かに「曲を集めただけ」という感じがして、
アルバムとしての手ごたえに乏しいですよね。
多分ビリーのアルバムの人気投票したら、最下位ですね。
私は、何年ぶりかのアルバムだったので、すっごく期待して、
それなりに気に入ってはいました。
でも、リリースから10年以上経ってリマスター盤CDを買って、
Temptation、この曲が大好きになりました。
リリース時はまだ10代だったので、この良さが分からなかった!
この曲は特別です。あとA Matter Of Trustも今でも大好きですが。
今度自分のクラスでビリー・ジョエルを取り上げようと思ってたので、興味深く拝見いたしました。前回はQueenとCarpentersを取り上げたのですが(どういう英語クラスなんでしょう!?)ビリー・ジョエルだと、どんな曲がわかりやすいでしょうか!?むかーし自分は「Honesty」を授業でやった記憶が・・・。
『ブリッジ』は、曲ごとにみると良い曲も入ってるんですけどね。僕は「This is the Time」も好きですし、スティーブ・ウィンウッドとの共演「Getting Closer」も好きなんですが。
洋楽で英語を学ぶのは良い方法だと思いますよ。英語になじむという、まず最初の関門は突破できると思います。(その先に行くのは、なかなか「聴いてるだけ」では難しいですけど)
どんな曲が英語の勉強に向いているか・・・難しいですね。歌詞を授業の中で読んでいくとすると、省略の少ない表現の曲とか、スラングが少ない曲がいいのかもしれません。意外と難しいですよね、実際に探してみると・・・。
ニューヨークの松山千春なんて言われてた
私は彼にはやはりイデオロギーには関係のない
ノー天気(ではないか)都会の孤独や鬱みたいなのを歌って欲しいな、単純に。
ニューヨークの松山千春。そんな風に言われていたなんて知りませんでした。
そういえば、「レニングラード」とか「ノー・マンズ・ランド」といった曲にもメッセージ性は読み取れますね。でも、僕はメッセージよりも先に音楽を鑑賞してしまいます・・・。イデオロギーとかよりも、まず曲を楽しんでます。
そうですね、この作品はイノセントマンとは雰囲気が全然違っていて、おそらく私生活とつながってたんでしょうね。僕は最近、どちらかというと不安定な精神状態の人の音楽が好きかもしれません(笑・・)。