彼らのファッションはここでも何度か紹介しているヴィヴィアン・ウェストウッドのヴィヴィアン・イザベル・スウェアがデザインしたもの。そして、彼らの精神的な過激さを支えたのがヴィヴィアンの相方でピストルズのマネージャー、マルコム・マクラレン。ピストルズの産みの親と言ってもいい存在だ。彼らは、お金儲けのために低俗化した音楽や、テクニックを偏重して精神性が低い音楽すべてを否定する。もともとベーシストであったグレン・マトロックが「俺はビートルズが好きだ」と発言したことでマルコムにクビにされ、替わりにピストルズのファンであったシド・ヴィシャスが加入したという話もあるくらいだ。

Never Mind the Bollocks Here's the Sex Pistols
ともかく過激なピストルズではあるが、僕は彼らの音楽はかなり聞きやすいポップ・ソングだとも思っている。ボーカルや歌詞の過激さにはしびれる一方で、ちゃんとポップ・ソングとして心のつぼを押さえてくれる良質の音楽でもあるというところがピストルズのすごいところだと思うのだ。ピストルズの音楽は聞いていてけっこう「楽しい」のだ。
で、今日紹介するのはセックス・ピストルズの唯一のオリジナル・アルバム『勝手にしやがれ!(Never Mind the Bollocks:Bollocks は混乱orきんたまという意味)』である。イントロでしょっぱなからぶちのめされ、ジョニー・ロットン(ジョニー・ライドン)のボーカルにさらにぶっとぶ驚愕のパンク・ロック「さらばベルリンの陽」、放送禁止にもなったにもかかわらず全英2位を記録したという「ゴッド・セイヴ・ザ・クイーン」、俺は無秩序を望む反キリスト教の無政府論者だと歌う「アナーキー・イン・ザ・UK」は不動の名曲だろう。他にも、中絶への痛烈な批判の曲「ボディーズ」、思いのたけを叫びまくるジョニー・ロットンが圧倒的な「分かってたまるか」、俺たちはまったくもって空っぽだという言葉に共感してしまう「プリティ・ヴェイカント」、レコード会社非難と自分たちの態度表明の曲「拝啓EMI殿」など、良い曲がたくさん入っている。
パンク・ムーヴメントで出てきたバンドの中でも、ピストルズは圧倒的な存在感を持っている。ピストルズだけを特別扱いするのはおかしいという声もあるとは思うが、僕の中ではある意味、別格だ。過激で分厚い彼らのバンド・サウンドとジョニー・ロットンのボーカルの強烈なインパクトの前では、他の「パンク」バンドの印象はやや薄れてしまう(僕はクラッシュなども好きではあるが)。
パンク・バンドの中でピストルズが「特別扱い」を受けているのには他にも理由がある。彼らはアルバムを一枚出しただけですぐに解散した。実はアルバム製作時にすでに解散を決めていたという話もある。彼らは「決して商業主義には乗らない」というパンク的態度を最後まで貫き通した、おそらく唯一の「パンク」バンドだ(ジョン・ライドンはその後もいろいろやってるけど)。僕はこういう精神を批判するつもりも賞賛するつもりもない。商業主義に片足つっこみながらでも革新的なことを続ける道はあると思うし、それも悪く無いと思うから。ただ、彼らが貫き通した反骨精神が、彼らの音楽に驚くべき奇跡的なパワーを与えたことは間違いない。
最近、ジョニー・ライドンがグリーン・デイのことを「あんなのはパンクじゃない」とかなり口汚く罵ったらしい。こういう発言は人を不愉快にさせるだけだからあまり良くないよな・・・とは思いながら、ピストルズは圧倒的だったのだという印象を変えることも難しいと思う。
いいっ! もう、どこへでも連れて行ってください・・・みたいな(笑)
気になることが1つ。
ジョン・ロットンとジョニー・ロットンは、正式には彼の芸名はどちらになりますか?ま、JohnもJohnnyも同じ名前であることは違いないけど。。。
ロットンとライドンは本名と芸名の差だと思っていたけど?大昔から実は気になっていたけど、すっきりせず。
シド&ナンシーが観たくなってきました。
ピストルズ、僕もじつはわりと入ったのが遅かったんですが、最初に聞いたときは、あまりにストレートに深いところまで入って来たのでびっくりしました。かなり過激なのにすごく聞きやすいんですよね。
ジョニー・ロットンというのはセックス・ピストルズのころの芸名ですね。ロットン(rotten)には、腐ったとか、臭いとか、態度の悪いといった意味があります。で、ピストルズ解散後は正式にジョン・ライドン(John Lydon)で活動しているようです。これが本名なのかどうかは僕は知りませんが・・・。
ピストルズのころもメンバーにはジョニーでなくジョンと呼ばれていたみたいですね。
ピストルズのカリスマ性はとんでもなく当時すごくって、これ聞かなきゃどうするって感じでした・・・逆に反体制という体制を1枚で解散したにしろ作ったことに、今だったら、猛烈に反発したくなるかもしれません。従来のものを否定したからって新しくは無いわけで・・・
でも、それを言わせないカッコよさがあり、私なんかPILまで買ってたりしました(爆)
記事にとても同感であります。
>商業主義に片足つっこみながらでも革新的なことを続ける道はあると思うし、それも悪く無いと思うから。
・・・ここが好きです。
私からもTB送らせてくださいね!
TBありがとうございました。
いろんなとこで、お名前はお見かけしておりました(^^)。
ビートルズが好きだったグレンを首にしたのは、EMIへのあてつけのパフォーマンスだったとも言われていますね。
でも、まあそういうマルコムの戦略を抜きにしても、彼等はやはり特別ですごいバンドだと思います。
ファッションは、専門ではありません・・。ごく限られた知識を基に書いてますよ・・。
反体制という体制・・そのくらい強力だったというのはわかる気がします。でも、やっぱりかっこいいし、新しくもあったんだと思います。あんな強烈な歌い方、なかなかできませんしね。
いろんなところで名前を・・そうですか・・恥ずかしいです、なんとなく(笑)。マルコムの戦略的プロデュースも大きかったのでしょうが、やはりメンバーが強力です。アルバムで聴く限りは「下手」ではないですよね。
museさんが、ビリー・ジョエルやクイーンと同じ位ピストルズが好きだということを知り、ビックリする一方で、な〜るほど〜とmuseさんの音楽に対する姿勢に感心してました。
私も食わず嫌いはやめてどんなバンドでもアルバムあるいは曲そのものを正直に評価しよう…って出来るか?(笑)
僕の好きなアーティスト・バンドはかなりバラバラですね・・。ピストルズやニルヴァーナとビリー・ジョエル、エルトン・ジョンが並ぶ時点で、なんじゃそらと思われる方もいるかもしれませんね・・。
といっても、やっぱりまだ「食わず嫌い」で聴いてない領域もたくさんあるんですよね。音楽の世界は果てしなく広いです・・。